「女子の本当の実力を分かっている人は少ないと思う。」
スカイ・ブラウン プロスケーター
2021年の東京オリンピックで新競技として採用された以降も、スケートボードへの関心は高まり続けています。しかし人気の一方で、男女別の競技人口には依然として偏りが見られます。また、女性のプロアスリートが企業スポンサーを得る機会も未だ限られています。
この不均衡の根本の原因は、女性の能力不足ではありません。プロスケーターであるスカイ・ブラウンのようなアスリートたちは、より多くの女子がスポーツに参加するよう声を上げています。しかし、こうした努力の妨げとなっている背景には、女子は男子に比べて技術に劣るという誤解があります。
スケートボードは、優れた運動神経と予測不能な体の動き、そして独自のセンスが求められるスポーツです。スタイルは常に好みや考え方で評価される中、テクノロジーを使うことで、人間の目では測定できないパフォーマンス データを取得することができます。こうして得られたデータは、女性アスリートの真の実力を示すことができ、性別にまつわる身体能力に関する誤解を払拭するのに役立っています。
「スゴさ」の測定
プロジェクト スケートは、スケートボーダーのスピード、高さや回転を計測し、グラブやトリックをリアルタイムに識別できる機械学習ツールです。東京とシドニーの Google チームが開発し、現地のスケートボーダーたちと共に機能を改良してきました。世界トップレベルのアスリートであり、女子のスケートボードを熱心に広めるスカイ・ブラウンにも、初期段階でこのツールを試してもらいました。
「高さはあまり見られていなくて、今は、難易度ばかりが注目されている。これがあればもっと上を目指せると思う。」
スカイ・ブラウン プロスケーター
Googleの機械学習ツールとカメラを組み合わせることにより、プロジェクト スケートは、3 次元空間におけるスケーターの体の位置を把握します。
この技術は、機械学習モデルを構築、訓練、展開するためのオープンソース プラットフォームである TensorFlow と、人間の体の動きを把握して点を描画する TensorFlow のツール Blazepose を利用しています。
「コンピュータは機械学習によって、スケートボーダーの動きを認識するように訓練されます。そのデータを使って、スケートボーダーのパフォーマンスを正確に測定することができるのです」と話すのは、Google の Brand Studio APAC クリエイティブ テクノロジストであるデヴィッド・アーカス氏です。
肩の動きで回転の情報、また両手の位置でグラブのデータが把握でき、さらに両足の置き方と角度によって、スケートボードの位置が識別されます。
これらの情報を組み合わせてトリックを特定し、スピード、ランプからの高さ、滞空時間などのデータを正確に表示します。
「スケートボードだけでなく、他のどんなスポーツでも、女子がもっと参加するようにインスピレーションを与えたい。男子にできることは何でも、女子にだってできると思う。」
スカイ・ブラウン プロスケーター
「プロジェクト スケートは、偏見によって過小評価される可能性のあるスケートボーダーたちの高い技術を、確実に証明することができます。」
Brand Studio APAC クリエイティブ テクノロジスト デヴィッド・アーカス
無限の可能性
パフォーマンスにまつわるデータを得ることが、女性スケートボーダーがさらに上を目指すモチベーションになることを、プロジェクト スケートは実証しました。今まで可視化されることのなかったこれらのデータは、アスリート個人の成長を助けるだけでなく、性別や能力を問わず、あらゆるスケートボーダーの真の実力を認識する新しい機会を与えてくれるでしょう。
「今後もこの技術開発を続けることで、アスリートたちの見事なパフォーマンスをデータで示し、平等な参加の機会をもたらしたいと考えています。」
Brand Studio APAC クリエイティブ グループ リード タラ・マッケンティ
競技の審査員や解説者にとっても、このツールは、高さや回転、トリックの種類などの判断の際に非常に役立つと考えられます。またこうした指標や複雑な体の動きの解析は、他のスポーツにも応用できる可能性があります。テクノロジーが、高精度なデータと新しい視点をもたらすことで、アスリート達が同じ土俵の上で競い合い、あらゆる人々がより参加しやすくなる場を作ることができるのです。